[文章内容]
魂と魂とをむすぶ奇妙なすばらしい愛の神秘!愛は杜会の法則から、自然からさえも独立している。しかしそれを知る者は実に少ない。それをあえて示すものは、なおさら少ない。人は粗暴な世の中を恐れる。世間は即決裁判を欲し、因習的な鈍い言葉の意味にしかとらない。……半ば法律的な言葉の中では、愛は性と年齢と杜会の階級にしばりつけられている。そして必要な条件にかなっているか否かによって、自然であったり、なかったり、正当であったり、なかったりする。1しかしそれは「愛」の深いいつきく泉からとった一掬の水にすぎない。……愛は、空間と時間において、一切から遠ざけられて、成しとげられる。世紀を越えて、生きた人々や死者たちの思想をむすび、若い人々の心と老いたる人々の心を密接な清いきずなでむすぶ。……父親と子供たちの間には、時には、こうした関係は、彼らが意識しないで存在する。
[作者]
ロマン・ロラン
[参照図書]
愛して生きる言葉（芸術生活社）