[文章内容]
僕たちは死が肉体の最後であることを知っている。そして肉体がなくなったあと、意識もなくなり、無心の境地に入ることを信じ、何の要求もなくたり、安眠以上の安眠であることを信じる。この世でなすべきことをした悔いのない生活、それができたら成仏できることを僕は信じている。しかしそれが本当にできるとは思わないが、なるべく悔いが少なく、できるだけ多く働けたらそれで僕は許されると思っている。人間はどうせ万能ではない。できるだけ、それも程度だが、善意を生かせば、それで許されると思う。ただ他人を不幸にした場合、そのことだけは心残りになる。だからなるべく他人を不幸にしない努力が大事になる。
[作者]
武者小路実篤
[参照図書]
愛して生きる言葉（芸術生活社）