[文章内容]
恋愛はよき子をつくり得る二人のものを結びつけるためにある。しかしここにも病的な分子が入りやすい。健全な正しい恋愛をするよりも、空想的な、また真によき相手を得ない内に、恋愛に飢えることで不十分な相手、或いは、不相当な相手を恋することもあり得る。恋愛至上主義という言葉があるが、よき人間を生むことは実に大事なことだから、恋愛は相当価値の高いものだが、しかし恋愛のための恋愛は食欲のための食欲のごときもので意味をなさない。食欲は腹をはらすためにあるのだ。恋愛の目的は二人の異性が協力してよき子供をつくり育てるためにあるのだ。恋愛だけを享楽しようと思うものは、腹がはるのを恐れる美食家のようなものである。
[作者]
武者小路実篤
[参照図書]
愛して生きる言葉（芸術生活社）