モデルのビヘイビアは、CakePHPのモデルに定義された機能のうちいくつかをまとめるひとつの方法です。 これを利用すると、継承を必要とせずに、典型的な挙動を示すロジックを分割し再利用することができます。 例としてはツリー(tree)構造の生成があります。 ビヘイビアはモデルを拡張するシンプルな、それでいて強力な方法を提供し、単純なクラス変数を定義することで、モデルに機能を追加することができます。 これによりビヘイビアがモデルから(ビヘイビアがモデリングしたり異なるモデル同士が必要とすると推定できる)あらゆる余分な(要件定義に含まれないかもしれない)重みを取り除くことができます。
例として、ツリーのような構造的情報を保存するデータベーステーブルにアクセスするモデルを考えます。 ツリー内のノードの削除、追加、移動はテーブルの行の削除、挿入、編集と同じように簡単なわけではありません。 多くのレコードは、要素を移動した後に更新する必要があるかもしれません。 一連のツリーを扱うメソッドを(その機能を必要とする全てのモデルの)基本モデルに作成するのではなく、単にモデルに TreeBehavior を使うようにすることができます。 より正確な言い方をすれば、ツリーのように振る舞えとモデルに命じます。 これは振る舞い(behavior)をモデルに割り当てる(attach)こととして知られています。 たった1行のコードだけで、CakePHPのモデルは基本構造と対話(interact)できるメソッド群を新たに取得するのです。
CakePHPには既に、ツリー構造、コンテンツ翻訳、アクセス制御リスト用のビヘイビアが付属しています。 言うまでもありませんが、コミュニティの貢献によるビヘイビアが最早CakePHP Bakery (http://bakery.cakephp.org) で入手できます。 このセクションでは、モデルへのビヘイビア、CakePHPの組み込みのビヘイビアの使い方、独自のビヘイビアの作成方法といった基本的な使用方法のパターンを紹介します。
本質的に、ビヘイビアは Mixin です。
ビヘイビアはモデルのクラス変数 $actsAs を通してモデルに割り当てられます。:
class Category extends AppModel {
public $actsAs = array('Tree');
}
このサンプルはCategoryモデルがTreeBehaviorを用いて、ツリー構造の中でどのように管理されるかを示します。 ビヘイビアが指定されたら、あたかも元のモデルのメソッドの一部として存在しているかのような、ビヘイビアによって追加されたメソッドを使用してください。:
// IDをセット
$this->Category->id = 42;
// ビヘイビアのメソッド、children()を使用する:
$kids = $this->Category->children();
ビヘイビアがモデルに割り当てられる場合に、設定を定義することが必要または可能となるビヘイビアもあるでしょう。 ここでは、基底のデータベーステーブルの「左(left)」と「右(right)」のフィールド名をTreeBehaviorに伝えましょう。:
class Category extends AppModel {
public $actsAs = array('Tree' => array(
'left' => 'left_node',
'right' => 'right_node'
));
}
また、モデルにはいくつものビヘイビアを割り当てることもできます。 例えば、Categoryモデルがツリーとしてだけ振る舞うべき理由はなく、国際化のサポートも必要とするかもしれません:
class Category extends AppModel {
public $actsAs = array(
'Tree' => array(
'left' => 'left_node',
'right' => 'right_node'
),
'Translate'
);
}
これまではモデルのクラス変数を利用してモデルにビヘイビアを付与してきました。 これはビヘイビアがモデルの存続期間を通して割り当てられることになるということです。 しかしながら、実行時にモデルからビヘイビアを「はずす」必要があるかもしれません。 では、前のCategoryモデルを見てみましょう。 このモデルは、TreeとしてもTranslateモデルとしても振舞いますが、何らかの理由で強制的にTranslateモデルとしての振る舞いを止める必要があるとします:
// モデルからビヘイビアをはずす:
$this->Category->Behaviors->unload('Translate');
するとCategoryモデルは直ちに翻訳モデルとしての振る舞いを停止します。 代わりに、通常のモデル操作: find・save等の動作時に翻訳ビヘイビアを無効にする必要があるかもしれません。 実際、CakePHPのモデルのコールバックの動作時にビヘイビアを無効にする方法を見てみます。 ビヘイビアをはずす代わりに、翻訳ビヘイビアへのコールバック通知を停止するようにモデルに指示します。:
// ビヘイビアにモデルのコールバックを処理させないようにする
$this->Category->Behaviors->disable('Translate');
ビヘイビアがモデルのコールバックを処理しているかどうかを確認する必要があるかもしれません。 もし処理していない場合は、再度動作するように元に戻します。:
// ビヘイビアはモデルのコールバックを処理していない場合
if (!$this->Category->Behaviors->enabled('Translate')) {
// 処理するようにする
$this->Category->Behaviors->enable('Translate');
}
実行時にモデルからビヘイビアを完全にはずすことができるように、新しいビヘイビアを割り当てることもできます。 これまでみてきたCategoryモデルは、Christmasモデルとして振る舞う必要がありますが、それはクリスマスの日だけです。:
// 今日が12月25日だったら
if (date('m/d') == '12/25') {
// モデルはChristmasモデルとして振る舞う必要がある
$this->Category->Behaviors->load('Christmas');
}
loadメソッドを使用して、ビヘイビアの設定を上書きできます。:
// すでに割り当てられたビヘイビアのある設定を変更します
$this->Category->Behaviors->load('Tree', array('left' => 'new_left_node'));
モデルが割り当てているビヘイビアのリストを取得するメソッドもあります。 メソッドにビヘイビア名を渡すと、ビヘイビアがモデルに割り当たっているかどうかを返します。 何も渡さないと、割り当てられているビヘイビアのリストを返します。:
// Translateビヘイビアが割り当てられていない場合
if (!$this->Category->Behaviors->loaded('Translate')) {
// モデルに割り当てられているすべてのビヘイビアのリストを取得する
$behaviors = $this->Category->Behaviors->loaded();
}
モデルに割り当てられたビヘイビアは自動的にコールバックが呼ばれます。 そのコールバックはモデルで見られるものと似ています: beforeFind 、 afterFind 、 beforeSave 、 afterSave 、 beforeDelete 、 afterDelete 、 onError - 詳しくは doc:/models/callback-methods を見てください。
作成したビヘイビアは app/Model/Behavior に置く必要があります。 名前はキャメルケース(CamelCase)で接尾語として Behavior がつきます。 例えば、NameBehavior.phpとなります。 独自のビヘイビアを作成する時には、コアのビヘイビアをテンプレートとして用いると便利なときがあります。 コアのビヘイビアは lib/Cake/Model/Behavior/ にあります。
全てのコールバックとビヘイビアのメソッドは、それが呼び出される元のモデルへの参照を第一引数として受け取ります。
コールバックの実装に加えて、ビヘイビア毎、モデルとビヘイビアの関連、の両方またはどちらか一方に対して、設定を追加することができます。 設定方法についての詳細はコアビヘイビアとその設定についての章で見ることができます。
以下はモデルからビヘイビアへ設定を渡す方法を示す簡単な例です:
class Post extends AppModel {
public $actsAs = array(
'YourBehavior' => array(
'option1_key' => 'option1_value'
)
);
}
ビヘイビアを使うモデルのインスタンス全てにわたってビヘイビアが共有されることから、ビヘイビアを使っているエイリアス・モデルの名前ごとに設定を保持することは良い習慣となります。 ビヘイビアが生成されたときに、ビヘイビアの setup() メソッドが呼ばれます。:
public function setup(Model $Model, $settings = array()) {
if (!isset($this->settings[$Model->alias])) {
$this->settings[$Model->alias] = array(
'option1_key' => 'option1_default_value',
'option2_key' => 'option2_default_value',
'option3_key' => 'option3_default_value',
);
}
$this->settings[$Model->alias] = array_merge(
$this->settings[$Model->alias], (array)$settings);
}
ビヘイビアのメソッドは、そのビヘイビアを振る舞いをする全てのモデルで自動的に利用可能になります。 例として、以下のようにしたとします:
class Duck extends AppModel {
public $actsAs = array('Flying');
}
Duckモデルにメソッドあるかのように FlyingBehavior のメソッドを呼び出すことができます。 ビヘイビアのメソッドを作成するとき、最初の引数として呼び出すモデルの参照が自動的に渡されます。 他の与えられた引数全ては1つずつ右にずれます。 例を上げます:
$this->Duck->fly('toronto', 'montreal');
このメソッドは2つの引数をとりますが、メソッドの定義は次のようになります:
public function fly(Model $Model, $from, $to) {
// 飛ぶことをする。
}
ビヘイビアのメソッド内で $this->doIt() のようにメソッドを呼ぶと、$model引数が自動的に挿入されないということに注意してください。
「mixin」であるメソッドの提供に加えて、ビヘイビアはパターンマッチングによるメソッドもまた提供します。 また、ビヘイビアはマッピングするメソッド(mapped methods)も定義できます。 メソッドをマッピングするにあたって、メソッドの機能にパターンマッチングが使われます。 これによりビヘイビアに Model::findAllByXXX のようなメソッドを作成することができます。 メソッドのマッピングはビヘイビアの $mapMethods 配列に定義されます。 マッピングされたメソッドの定義は普通のmixinなビヘイビアのメソッドとはわずかに違います。:
class MyBehavior extends ModelBehavior {
public $mapMethods = array('/do(\w+)/' => 'doSomething');
public function doSomething(Model $model, $method, $arg1, $arg2) {
debug(func_get_args());
//何かする
}
}
上に記したものは、あらゆる doXXX() メソッドの呼び出しをビヘイビアにマッピングします。 見ればわかる通り、モデルは第一引数のままですが、第二引数には呼ばれたメソッドの名前が入ります。 これを用いて、 Model::findAllByXX と同じように、補足的な情報としてメソッド名の一部を使うことができます。 上記のビヘイビアがモデルに割り当てられると、次のようなことになります:
$model->doReleaseTheHounds('homer', 'lenny');
// 以下が出力される
'ReleaseTheHounds', 'homer', 'lenny'
モデルのビヘイビアはモデルのコールバックと同じ名前で、その前後に呼び出されるコールバックをいくつか定義できます。 ビヘイビアのコールバックにより、割り当てられたモデルのイベントを捕捉したり、 パラメーターの拡張または他のビヘイビアで引き継ぎなどができるようになります。
利用可能なコールバックは以下になります。
モデルのビヘイビアのコールバックは単純にビヘイビアクラスのメソッドとして定義されます。 標準のビヘイビアのメソッドと同じく、 $Model パラメータを第一引数として受け取ります。 この引数はビヘイビアのメソッドが呼び出されたモデルにあたります。
モデルにビヘイビアが割り当てられたときに呼ばれます。 settingsは割り当てられるモデルの $actsAs プロパティからもたらされます。
ビヘイビアがモデルからはずされた時に呼ばれます。 親のメソッドは $model->alias に基いてモデルの設定を削除します。 このメソッドをオーバーライドして独自のクリーンアップ機能を与えることができます。
ビヘイビアのbeforeFindがfalseをかえすと、find()を中止します。 配列を返すと、find操作に使われるクエリ(query)引数を拡張します。
afterFindを使ってfindの結果(results)を拡張することができます。 返り値はチェイン内の次となるビヘイビアかモデルのafterFindのどちらかに、 結果として渡されます。
ビヘイビアのbeforeDeleteからfalseを返すことで、削除を中止することができます。 trueを返すことで続行を許可します。
afterDeleteを使うことで、ビヘイビアに関するクリーンアップ操作を実行することができます。
ビヘイビアのbeforeSaveからfalseを返すことで、saveを中止することができます。 trueを返すことで続行を許可します。
afterSaveを使うことで、ビヘイビアに関するクリーンアップ操作を実行すること>ができます。 $createdはレコードが作成された時にtrueに、レコードが更新された時にfalseになります。
beforeValidateを使ってモデルのvalidate配列を変更したり、その他のバリデーションの前処理のロジックを処理することができます。 beforeValidateコールバックからfalseを返すと、バリデーションを中止し、失敗にさせることができます。